2014年朝日アマ将棋名人戦長野県大会レポート(観戦記MSG総統)

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1年納めのビッグイベント、朝日アマ名人戦を迎え、いよいよ年の瀬も迫ってきたなと感じます。 

県下各地から腕自慢が集い、地区予選とかはナシで強豪同士が、のっけからぶつかり合うのが、他のタイトル戦と違うのが、この大会。それだけに、楽しみもキツさも倍増です。 

今回も多くの選手が集まりました。徳永進・長野安茂里支部長を始めとする要人の方々の御挨拶の後、熱戦の火蓋が切って落とされます!

名人戦。

今回の出場者は32名。昨年大旋風を巻き起こした信州大学勢の参加はなかったものの、昨年より1名少ない程度でした。

画面一番近くは、市川憲治VS甘利信夫戦、北信屈指のゴールデンカード!

 

その横で土屋稔先生の雄姿が・・・

一般戦と小学生戦の様子。

両部門とも3つのクラスに分けて実力の均一化を図っているため、選手の皆様も存分に戦えるように考慮されております。

山崎晃太朗VS平林幸生戦 

塩尻支部のホープ山崎君を迎撃したのは松本深志OBにして部長も務めた平林幸生氏。 

高校時代、平成9年の高校竜王戦で準優勝。その時の優勝者は、同じ深志生で池上俊輔氏の兄、壮一郎氏でした。その前の高校選手権では男子団体戦に出場して前年の高校3冠王を破る大金星を挙げ、ギャラリーを騒然とさせました。

 

そしてその翌年は池上&白木隆裕氏と組み、深志同士の決勝を制して全国出場を果たしました。因みにその時の対戦相手は(何て苗字か忘れてしまったが)彼の幼馴染であったとか。 

またその選手の弟も後に深志に入学して部長となり、当時高校最強だった嶺山友秀氏の良き先輩として面倒をみてくれたようです。

 

歴史談義はさておき、自身のブランクと、小学生のレベルが昔より遥かに高くなっている事に当惑したようですが、この山崎戦を乗り切り、エンジンが温まってきたようです。

松本第一高校顧問の塚越勇記先生。 

前回と違い単独参加。忙しい中の遠征には頭が下がります。 

翌週の山梨団体戦も前日に山梨に来場して一泊二日の遠征だったとか。 

良き教師に恵まれ生徒の皆様も幸せであります。

紅一点、松本の強豪女子小学生、小川清香さん。

実力、対局姿勢、どれをとっても堂々たるもので小学生とは思えない程に毅然としています。

 

先月は棋望会にも参戦。今後は中学生棋界を盛り上げて欲しいと切に願うばかりです。 

さて名人戦の方はと言うと・・・

 

こちらでは高校三冠の小山源樹君に長野県屈指の中学生ホープ土屋朝陽君が挑んでいます。 

ストイックな若者同士、しかも両者の得意戦法がモロにぶつかり合う図式が緊張感を高めました。 

勝負の行方は、やはり小山君に一日の長があったようです。土屋君は次戦も黒岩泰氏の秘策に敗れ残念ながら予選敗退。

相手の研究を如何に打ち破るかが、来年の彼の宿題となりそうです。

船坂徹VS田中博己戦 

この両雄が予選1回戦でぶつかる。これが朝日アマの醍醐味。 

正統派同士の対決は見る者にとって大いに勉強になります。 

また同じ居飛車党といっても戦型予想不能な所が、このカードの大きな特徴と思うのは自分だけか?

前月信州王将を獲得した高校生、西川洸佑君と中学生名人・西田新君の激突。 

2人とも短期間で飛躍的に上達したと思います。西川君は3年ほど前の竜王戦準決勝での井上徹也氏との熱闘が、西田君は小林豪君を破り1年生で早くも中学生名人になった事が印象に残ります。

 

私の予想は西川君優位でしたが、勝ったのは西田君でした。 

中学生ながらタイトルホルダーを破る。凄い事です!







奥村龍馬VS赤木崇幸戦

 

四間VS右玉、両者十八番の戦法を出し合いましたが奥村氏の強硬策が功を奏したようで。

 

 

最も感想戦では四間側も命懸けで大変な戦いとの事でしたが・・

再び一般&小学生の部へ

 

長沢忠宏氏が凝視しているのは小林卓馬VS瀬下雅也戦 

松本第二公民館教室屈指の俊英小林君と対するは空穂教室や北相木村教室に積極的に参加して腕を磨く瀬下君。

どちらも注目株です。 

試合の方も終盤まで接戦でした。結果は小林君の辛勝。 

小林君の事は良く知っている長沢氏ですが、その小林君に善戦した瀬下君に対して長沢氏の目には、どう映ったであろうか?

松本君の手がチェスロックのボタンに掛っていますが、確かこれは感想戦の光景だったと思います。

 

注目の若手対決とはいえ松本君優位だと思っていたら、西田VS西川戦同様、見事にハズレ。 

とはいえ三島君が勝ったと知った時は驚きました。 

更に三島君は翌週の山梨YBS杯ではB級に参戦させて4勝1敗。初戦を落としただけで後は破竹の4連勝。若手主体の塩尻支部チームの決勝トーナメント1位進出に大きく貢献致しました。

 

想像以上の成長振りに舌を巻きつつ、これからの活躍に期待したいです。

高校生屈指の好カード、南沢祐仁VS池田駿佑戦 

屋代高と岩村田高のエース同士の激突。付け加えれば高校の全国大会出場経験者同士の対決。 

と言う事で、結構豪華なカードと言えそうです。勝負の方は南沢君が制しました。

 

現在3年生の池田君は、大学でも将棋を続けるのか?一方の南沢君は2年生。高校大会では個人戦1本というのが私の予想で、流石にこれは間違いナシと思いますが、人員次第では団体戦出場もあるのかなあ・・・


名人戦も、いよいよ決勝トーナメント。組み合わせは、この通り。

外は寒いのですが、中は熱気ムンムン

田中支部名人VS小山高校竜王

 かつて小山君が中学生ながらアマ名人戦で準優勝、その時は準決勝で、この田中氏を破り決勝進出を決めました。 

しかし今回は十八番の菊水矢倉の堅陣を生かしきれず田中氏が雪辱を果たしました。

市川憲治VS荻原拓也戦 

この決勝トーナメントには中学生が2人勝ち残っておりました。1人は西田新君、もう1人は、この荻原拓也君。 

赤旗三段戦と県選手権C級では、いずれも3位だった荻原君、まだまだ勝てそうです。棋望会にも誘いました。きっと来てくれるでしょう。 

これに勝てば奥村氏に挑戦出来たのですが百戦錬磨の市川氏の牙城は固かったようです。

 

一方の西田君も勝てば長沢戦でしたが、中原英史氏の振飛車穴熊を攻略出来ずでした。残念・・・

場所は変わって一般A級、こちらも大詰めの最終戦。

 

岩村田高の池田君と相対するは、今売り出し中の中学生、鈴木翼君。 

最近メキメキと頭角を現し、安曇野将棋大会ではB級で優勝。 

いやそれ以上に凄いのは、前月の安茂里支部例会でのA級優勝!

 

あの中沢正直氏を抑えたばかりでなく、土屋朝陽君や松本泰河君といった当面の上級生ライバルを連破しての快挙。 

この大会でも塩尻支部期待のホープ、三島孝太、山崎晃太朗君を連破、更にこの池田戦も勝利をモノにし全勝でまたしてもA級制覇!早くも「第2の小林豪君」との期待を込めずにはいられません。 

その強さの秘訣の1つが、田中博己君にミッチリ教え込まれているからだとか。

 

棋望会への参加も意欲的。いつ登場してくれるのか?願わくば今月にしてほしいと願っていますが・・・

さて名人戦は準々決勝まで進行、これは赤木崇幸VS西川洸佑戦 

右玉が得意な者同士のせいか相右玉戦となり、西川君が勝って準決勝進出。 

彼は横歩取りや角換わりにも精通しているので対戦相手次第では、また違う魅力を見せてくれる筈。

 

それにしても難しそうな詰め手順をコンピューター並の速さで指し相手の王様を捕まえる所は、相変わらず素晴らしいです。

今から12年前のアマ名人戦決勝戦のカードがこれでした。

 

この時は、土壇場で、まさかの大波乱が生じ、奥村氏が逆転勝利を納め初タイトルを獲得したという事で、長野県将棋界の歴史を大きく塗り替えた一戦となりました。 

現役高校生初の長野県アマ名人、更には親子名人誕生というのも長野県史上初、まさに記録づくめの新名人誕生劇でした。

 

奥村氏は翌年連覇を達成。これまた史上初の「親子対決」を制してのモノでした。

 

今回の勝負は奥村氏が攻勢になるも二枚腰の市川氏が相手なので一筋縄には行かないと思いました。市川氏も手厚さには定評があり、竜王を勝ち取った時は元・奨励会二段を相手に角換わりの後手番で守勢ながら持ち前の手厚さで勝利を飾り頂点に勝ち上がったモノでしたが。 

しかし円熟期に差し掛かった奥村君が揺るぎなき自信で攻め切ったようです。

 

因みに最年少ファイナリストの記録が小山源樹君によって破られたのは奥村氏が初優勝してから9年後です。

その小山君の決勝戦の相手が、他ならぬ奥村氏とは皮肉な巡り会わせです。

10年にも満たない内に奥村君が旧世代になぞられるとは、あの時の私には想像もつきませんでした。


さて準決勝、これは長沢名人VS西川王将戦

 

長沢氏は四十路になってからも全国大会にて赤旗戦で日本一、朝日アマ準名人、そして今年も名人戦ベスト4と相変わらずの実力者ぶり。この大強豪に若い西川君が、どう挑むか注目されました。

 

金銀の盛り上がりを見せた西川君の胆力を長沢氏は賞賛していましたが、後手番ながら最後まで攻め足を止めなかった長沢氏が新鋭の挑戦を退けて4年振りの決勝進出。

もう一方は奥村竜王VS田中支部名人。

 

長野県屈指の黄金カードという事で私は土屋朝陽君に勉強になるだろうと思い、記録を採らせてみました。

 奥村氏は名人戦、赤旗戦と1回戦敗退が相次いだせいか、今回は普段以上に気合が入っていたようです。 

一方の田中氏も支部名人獲得&名人戦準優勝と健在ぶりをアピール。それだけでなく赤旗戦では何と囲碁の部に出場してB級ながら地区代表に。

 

将棋と囲碁の両方で地区予選を勝ち抜き、尚且つ共に県大会で白星を挙げるとは本当にスゴイ!

 

今回は6年振りの決勝進出を目指した田中氏でしたが、こちらも奥村氏の猛攻が凄まじく2年振りの決勝進出を果たしました。

 

それはそうと朝陽君には、この対局どう映ったかな?

3位決定戦:田中VS西川戦

 

相横歩取戦から壮絶なドッグファイトを展開、安全策など目もくれない踏み込み合いを制したのは西川君でした。先手番を握った田中氏を破るなんて、なかなか出来る事ではないと思ったのですが・・・ 

山梨団体戦では連戦の疲れが出た感のある西川君でしたが来年も出場を希望するならAチームのメンバー候補にしたいです。

 

彼は確かアマ四段。これからが楽しみで、高校大会でも寺沢凌君や小林豪君等との鎬の削り合いに注目したいです。

ついに決勝戦。最後の取組は長沢VS奥村戦

 

1年締め括り千秋楽結びの1番に相応しい横綱対決と言えるでしょう。

 

名人戦では長沢氏が3連勝中、ただそれ以外の棋戦では奥村氏が対戦成績で大きくリードしており、勝敗予測は不能といえます。長沢氏が勝てば、名人戦、赤旗戦に続いて3冠、奥村君が勝てば竜王と併せて2冠。常人から見れば涎が出る程の懸賞金のようなモノですね。

 

戦型は先手奥村氏の四間飛車に長沢氏が6五歩早仕掛けを目指したのを見て奥村氏が十八番の独走銀を敢行

 

これに対して長沢氏が玉頭の歩取に目もくれず全面戦争に踏み込んだ事から激しい乱戦模様の戦いに。

 

13年間ずっと思いつづけた事でありますが、この両雄の戦いはいつも、意地・腕力・能力を激しくぶつけ合っているため、教科書・定跡書通りの展開など、始めから成り得ないと言っても過言ではないでしょう。

 

今回は奥村氏が一瞬の隙を衝いて猛ラッシュを敢行、これが功を奏して寄せ切り2冠達成、信越決戦に駒を進めました。


表彰式で賞状を受け取る奥村氏。

 

信越代表決定戦は、新潟市で開催され早川俊氏と一戦交える事になります。

 

奥村氏の頑張りに期待致しましょう!


大会が終わり外に出ると、御覧のようなイルミネーションが。 

来る時は朝陽が眩しかっただけに同じ場所で別の世界を見ている気分でした。 

平成26年も、まもなく終わりを告げようとしています。今年も色々とありました。

 

皆様が良いお年を迎える事が出来るよう心より祈念致したいと思います。